不要不急の集まりだった
みんないけない事だと思っている、「よくないなぁ」って共通意識はあっても、結局流れは止められずにみんな仲良く爆死。みたいな事ってよくあるよね。特に我らが超清潔大国日本の免疫力高めの若者たちにはよくあると思う。
一人のぶっ飛んだ奴の提案に流されて「これってやめたほうがいいんじゃね?」みたいに思ったとしてもそのままずるずるいくやつ。下校時間すぎても警備員から隠れながらバスケしたり、回転寿司で大食い大会始めたり、何気ないカラオケが一気にフリータイム朝5時コースになったり、飲みの後にナンパで相席屋やクラブに行ったり。特に最後のはうまく行った試しがない。顔面の問題かコミュニケーションの問題かあるいはその両方かわかんないけど。
でもこういう、集団自爆みたいなのって案外心地いい。多分僕自身が孤独死を一番苦手とするタイプなんだと思う。極度の寂しがり屋。いつも死場所じゃなくて共死にしてくれる人を探してる。歩く自爆ミミック。
ちなみにそんな僕でも、みんなで風俗にいくやつの気が知れない。賢者タイムの事考えてみろ。なんで死んだ猿の顔して死んだ猿の顔した奴と合流せにゃならんのだ。中にはもっと元気なチンパンジーみたいになるやつもいるし。意味がわからないよ。まぁ、でもみんなでお互いの好みを言い合いながら店探してる時は楽しいんだけどね。
実は今、昔の友人達に会うために故郷の広島にいる。多浪した僕は、周りの友人たちが社会人3年目だとか7年目だとか子供が3歳だなんだ言ってるなかで、大学生4ちゃいを迎えようとしている。多浪というのは大学に入ってしまえばあまり気にならない(特に医学部は)のだが、「横(同世代)とのズレ」みたいなのは未だにつきまとってくる。皆が仕事帰りのスーツ姿で飲みにくる中、一人私服で春休みの雰囲気を纏うのには申し訳なさすら感じる。
彼らと飲んでいると本当にどうしようもなくなる瞬間がある。同世代とのズレなんてもうとっくに慣れたと思っていたのに、このズレというやつは形を変えて毎年襲ってくる。就活や修論の悩みの話を聞かされたと思えば、それは上司の愚痴に変わり、この前は部下の愚痴や転職の話や結婚の話に加え、コロナの仕事への影響というスパイス付きだった。テレワークとリモートワークの違いもわからない僕には少々キツく鼻にきた。
そんな彼らも飲みの後半になれば酔いも回り、どの歳になってもつきない女や下品な話で盛り上がり始める。すると、突然カラオケでオールとかしそうなあの昔の雰囲気に戻ってくる。その瞬間は本当に楽しいし、いつかそれも消えてしまうんだろうなとも思う。こういった体験をする度に、友人には会える時に会っておかなければという気持ちはますます強くなる。
集まれる時に集まるべきだ。こういった集まりは不要では絶対に無いし、きっと不急でもないはずだ。この年齢になると予定も合わなくなるし、後数回しか会えない奴もきっといると思う。昔は毎日のように顔を合わせていたのに、もう片手で数えられるくらいしか会えないのも寂しい話だ。突然遠くに行ってしまう奴だっている。
この土日暇だったのでダメ元でまだ会えてない仲のよかった友人に連絡してみた。先日一緒に飲んだ奴らも含め、久しく会ってないそいつと飯でも行こうかと。
「俺いま広島おるんやけど、帰ってたりせんの?」
「広島おるで。どしたん?」
「暇ならお好み焼き食いに行こうや。俺最近食っとらんし、他にも何人かくるで。」
「でもコロナがなぁ怖いし。お前医学生やんけ、自粛せなあかんのじゃね?」
確かに今はコロナに対抗するために自粛すべきだ。しかし、彼は就職も広島ではなかったし会えるものなら会いたい。それは俺だけじゃなく、集まる予定の友人達も、そして彼自身もそうだと思う。次に集まれるのなんていつになるか分からないじゃあないか。しかし彼は
「いやー、家族も渋っとるし今回はやめとくわ。すまんなマジで。また誘ってや。」
と断った。みんな「この土日はやばそうだし、集まらない方がええかも」って共通意識はあったのだろう。しかし今回は彼の一声でそのよくない流れは止まったた。昔は彼に引っ張られ色んな「よくない流れ」に身を投じて仲良く爆死したのだが、彼も守るべきものができ大人になってたようだ。ここでも精神年齢のズレのようなものに襲われ少し寂しくなったが、そうも言ってられない。
「ほうかー。いや、こっちこそすまんかった。また連絡するわ。ちなみにいつまで広島おんの?」
「あーしばらくずっと嫁と広島おるよ。いろいろあって今無職やねん。基本いつでも暇してるから連絡してや。」
不急だった。いつでも会えるんじゃん。