冬の星-イギリス滞在記(2)

ちょっと自分語りが多くなってしまったので、写真多めにして説明を加えたので、写真見るだけで少しは楽しめたらうれしいです、、ぜひ、、、

 

 前回、一人じゃ都会に馴染めない事を思い知らされた僕は逃げるように自然豊かな湖水地方に出向いた。

 

マンチェスターに別れを告げ湖水地方に向かった僕は、電車の窓辺から見える風景が都会の窮屈なものからゆったりとした田舎のそれに移り変わるのを、安心感と共に眺めながら時折ガイドブックを広げた。留学先のBATHがこぢんまりとした美しい田舎街だったからだろうか、景色に平原が広がってくると肩肘を張る感覚が薄れ、穏やかに座席のシートに身を埋めた。行先はウィンダミア駅。

 

湖水地方はとても綺麗で穏やかな自然に囲まれており、いくつかの大きな湖が点在する。その雄大な自然はピーターラビットの作者であるビアトリクス・ポターなど多くの文豪達に愛されたそう。そんな事がガイドブックには書かれていた。地図で見ると確かに、細長いやつを中心にいくつかの湖が点在しており、それを中心に街や道路があるようだった。

 

しかし、正直なところ湖水地方に出向いたところで楽しめる自信はあまりなかった。写真でみる限りは人の手のあまりはいっていない自然が豊かで綺麗風景がひろがっているが、それはツアーバスの予約や余裕のある日程設定などの準備を怠っている限り楽しめない事を示しているように思えた。加えて、自分の場合終電でBATHに帰るとしても滞在時間は7時間(しかも小さなスーツケースと共に)だ。

 

スーツケースとか荷物を預ける場所ないかなぁ、とガイドブックやネットで探してみたが、どこも「泊まる予定の宿に預ける」としか書いてなかった。ため息を着きながら、とりあえず景色が良いところなどをガイドブックで探してみたら、駅を降りてすぐのところから登れるオレストヘッドが綺麗だと書いてあったので行く事にした。スーツケースと共に(ほんと邪魔だった)。

道中、車窓から。都会マンチェスターの面影は消え、イギリスの田舎が広がってた。
湖水地方のGoogle Map. 一番大きいのがウィンダミア湖

ウィンダミア駅に着くと、こぢんまりとした街が出迎えてくれた。駅自体も簡素なもので、周辺にはツアー会社や小さな民泊のようなホテルが立ち並び、道幅などはとても狭く建物は敷き詰められている。しかし、とても綺麗な街だった。僕は予約したツアーやホテルもなければ、ゆく先もなかったのでとりあえずオレストヘッドをめざした。

 

googleマップや看板などを目印に歩いていると、歩いていた道がだんだんと舗装も無い山道に変わる。年季を思わせる木々は空に寝そべるようにのびのびとくつろぎ、足元には濃いほうじ茶みたいな色した大量の落ち葉が緑との綺麗なコントラストを作っていた。これはこれで絵本の中に迷い込んだようでなんだか不思議な感じ。

 

頂上に近くにつれて、湖水地方を見下ろす様な景色が少しずつ垣間見えてきた。空気が澄んでるせいか遠くまで見渡せる、緑と茶色と青い空白い雲の綺麗な世界。遠くにたたずむ湖は散らばった鏡の破片のようで、空を写したように銀がかった水色に輝く。次はあそこに向かおうと決めた。

 

頂上を経てオレストヘッドを降りた僕は、先ほど見えた綺麗な湖に向かった。それはウィンダミア湖と呼ばれる湖水地方随一の大きさを誇る湖で、地図で見た細長いやつだ。とりあえず僕はその湖を渡ってみたいと思った。調べると船や鉄道で渡れるみたいだったので船着場に向かった。

駅からすぐそばの景色。こんな感じの街並みが湖まで続いてる。基本、下り坂。
とても綺麗だった
オレストヘッドへの道中。色味が全体的に深くて綺麗だった。
オレストヘッドから見えたウィンダミア湖。すごい綺麗だった。
写真はちょっと色味変わってる気もする。

船着場への道中は民家の様な小さなホテルが立ち並び、小さな店などもたくさん立ち並んでいた。船着場に着くと、そこは観光客が増えピーターラビットのグッズのお店や、船の切符売り場、レストランや広い原っぱなどが広がり賑わっていた。とりあえず船に乗ろうとチケット売り場にいったのだが、たくさんの航路がありよくわからなかった。チケット売り場のお姉さんに聴けば良い話ではあるのだけれど、あいにく目的地も決まってなかったので聞きようがなかった。まぁ、英語苦手っていうのもあったんだけども。

 

 

結局、湖を渡りその後BATHへの終電に間に合う様に駅に着く事を目的として色々と調べていると、少し離れたところにフェリーがあることを知った。また、フェリーを降りるところからバスが出ておりそれに乗れば湖の横を走って小さな街まで行ってくれる事がわかった。別にどこに行きたいでもなく、ただ自然に身を寄せながらどこかへ行きたかった自分にはぴったりだと思い、フェリー乗り場を目指した。

 

 

結論から言うとフェリーという選択肢はあまり賢くなかった。もし湖水地方に行こうとしてる方がいたら絶対にお勧めしない。そもそも湖水地方への旅行は日程に余裕を持って計画的に行く場所だから僕みたいに場当たり的になる人は少ないと思うけれど、もしなんの計画もなしにウィンダミア駅に向かっている人がいたら参考にして欲しい。フェリー乗り場は結構遠くて道もなく徒歩でいく場所じゃなかった。

 

 

実際フェリー乗り場に着くと、車や自転車できた人がほとんど。自分みたいにスーツケースを引きずりながら歩いてきた人なんていなかった。しかし、フェリー乗り場からは湖のほとりまで行け、綺麗に澄んだ水を拝めたのはよかったかも。まぁ、フェリーじゃなくてもできると思いますが。ちょうど良いところにベンチがあったのでそこで一息着く事にした。

 

 

フェリーが来るとそのまま乗る事ができた。料金は確か一人1ポンドくらいで、フェリーの上で出発後の後払いだった。フェリーが動きだすとオレストヘッドの上から見たのとはまた違う、素敵な景色が出迎えてくれた。悠々と湖上でゆれるヨットや他の船達、横に広がる湖は静かに波をたて、たまに小さな島の様な木の群れのが顔を出す。綺麗だった。

 

 

オレストヘッドを登った時も思ったが、この湖水地方というものはきっと色覚を狂わす何かがある気がする。湖や木々、雲や空なんてどこにでもあるはずなのに、それら全ての色合いがため息が出るほどに調和していた。きっとウィンダミア駅についた時から、写真アプリみたいな何かフィルターのようなものが網膜に被さってしまうんだ。そう疑いたくなるほど、美しい自然にあふれていた。

オレストヘッドから船着き場への道中。こんな感じの狭い道をたくさん歩いた。
バス使った方がいいかも
”湖”だがこれくらいの大きさの船がたくさんいる
フェリー乗り場のほとりにある小道
奥のベンチで休ませてもらった
小道から見える湖の水は澄んでいてとても綺麗だった
フェリーから
良い感じの写真があんまりなかった。たぶん見とれてたんだと思う。

フェリーを降りると何も無い場所についた。他の乗客達は車や自転車で次々とどこかへ行ってしまうなか、一人取り残される僕。すると1台の小さな黒い小さなロケバスみたいなのが来た。Googleマップによるとバスが来るらしいがもしかしてこれ??と思い運転手に話しかけると、「そうだよー」とのこと。目的地をつげその場で5ポンドほど払って乗せてもらった。その小さなバスはマウンテン・ゴート・ツアーという現地のツアー会社が運行してるみたい。

 

そのままホークスヘッドという場所までバスに乗った。ホークスヘッドはウィンダミア湖を挟んでウィンダミア駅のちょうど真反対にある小さな町だ。ここからウィンダミア駅までいくバスが出ている。時間があったので少しぶらついてみた。思えば自然に見惚れるばかりで何も食べてなかったので、豚肉の専門店やワッフルにアイスを乗せて食べる店に寄った。

 

そのワッフルのお店の店員の女の子がとっても可愛かった。とてもとても可愛かった。田舎町の娘っていう感じの三つ編みの子で、にこやかだった。どれくらいにこやかだったかというと、最上級に人懐っこいスタバの店員って感じ。ワッフルの上にかけるソースをチョコかホワイトかその両方か(両方は追加料金)で選べるのだが、僕が「うーーーーん」と悩むと、その子も困った様に顔をしかめて「Ummmm〜〜」と悩んでくれた。無茶苦茶可愛かった。

 

結局、「Both??」と上目遣いで聞かれたので、即座に「イエス, プリーズ」とにやけ顔で答え、追加料金を払った。とても甘い味がしましたよ。単純ですね。店を出る時も笑顔で「Bye~~!!」と手を振ってくれた。この子に会うために湖水地方に引き寄せられたのかもしれない。

 

そんなこんなで町を探検したり、一息着いたり、ジンジャーエールを飲んだりしてバスまでの時間を潰していたら、バス停でなにやら面白いものを見つけた。それはバス停の塀の隙間に隠されてあった、滑らかで丸みを帯びた石ころ。その石ころには明るい紫を下地に金色の水玉模様が描かれ、加えて何やら文字が書いてあった。

” Do small things with great LOVE “

「愛に満ちたささやかな行いを」

こう解釈した僕は、そのGreat LOVEのヒントを求め石ころの裏をみてみた。

色々書いてあったが、要約すると

“石を見つけた人はFacebookのRock funというコミュニティで報告し、その後また何処か違う場所へ石を隠す”

というものだった。確かに僕がこの可愛らしい石を見つけた時、ちょっとしたワクワクと言うか高揚感のようなものを味わった。Great LOVEを受け取った瞬間だったのだろう。この小さな幸せを顔も知らない誰かにバトンするように、何処かへこの石を隠す。面白いなぁと思った。

 

すぐにFacebookに投稿した。「もしかしたら次は日本に隠すかも…」と一言添えて。すると3日後くらいに投稿に返事が来た。それは石をバス停に隠した人からのもので、彼女は「石を日本に隠すのは素敵ね」と言ってくれた。ちなみにこの記事を書くにあたって、投稿は削除しコミュニティからも抜けた(実名のアカウントで投稿したため)。ちなみに石はこの日本のどこかへ既に隠してある。今でも石のことを思うとちょっぴりワクワクする。

店員が無茶苦茶可愛かった
フェリー降り場からバスを経由してたどり着いた小さな町、ホークスヘッド
本当にこんな感じで石が置いてあった

僕はその後そのまま来たバスに乗り、ホークスヘッドを後にした。夕陽に照らされる湖水地方の自然達を眺めながらウィンダミア駅へと向かう途中名残惜しさを感じた。このままウィンダミア駅に着いたら、そのままBATHへ終電で帰るのだ。もうこの留学中に湖水地方に戻ってくることはおそらく叶わないし、将来また来れるかもわからない。そんな事を考えていたけれど、何故か満ち足りていた。

 

村上春樹のエッセイ「もし僕らのことばがウイスキーであったなら」というエッセイにアイラ島という場所が出てくる。アイラウイスキーというスコッチウイスキーのシングルモルトの蒸留所が多い島で、今回僕が行った湖水地方とはまた違った自然が広がる土地らしい。同じなのは、やはり人々に日常の喧騒から離れたゆったりとした非日常を提供してくれるところだと思う。このエッセイで、普段は有名なTVのコメンテーターが時たま人知れず一人でぼおっとくつろぎにアイラ島で過ごしている事が書かれていた。周りの人達もそれを知っているから話かけないようにそっとしているらしい。

 

日常で忙しく精神を擦り減っているときほど、こういった穏やかな自然に癒されるのかなとおもった。この時期の僕も色々なところで精神を削っていたんだと思う。だからこそノープランでただ綺麗な自然にの中に身を置くだけでもこんなにも満足できたのだと思った。湖水地方の自然を愛した文豪たちに少し共感ができた気がしてうれしくも思えた。そんな事考えながら帰りの電車に乗った。

 

その後は特になんのトラブルもなく家まで帰った。帰りの乗換駅で精力剤とコンドームの自販機を見つけ、買おうとしたが小銭が無かった、くらいの事しか覚えてない。あー途中可愛い人に会ったりしたりして、そのせいで乗換駅間違えかけたりしたけどあんまし覚えてない。何より、BATHの駅から自分の下宿先までのバスが終わっており、40分ほどかけて歩いてようやっと帰宅でき、非常に疲れた。次の日からまた実験の日々だったので死んだようにねむったが、心は満足していた気がする。

コンドームと精力剤の自販機
1£コイン×3を持ち合わせていなかったのが非常に悔やまれる

 

翌日から、また僕の研究生活は再開した。毎朝ボスに実験計画や結果を報告し、たまの夕方にディスカッションをし、夜にはジムに行く。こんな単調な日々がまた戻ってきたのだった。しかし、だんだんと帰国の日々が近づくにつれ、実験が無事終わるかどうか、論文がまとまるかどうか、研究発表や質疑応答の準備がきちんとできるかどうかなど心配事は重なり、湖水地方で充電された精神はまたすり減らされていった。

 

そんなある日の実験の待ち時間、論文を読もうと半ばうんざりしながらパソコンを開くとwindowsのログイン画面にとても綺麗な自然が写っていた。精神をすり減らす日常と対局にある非日常が想起されるものだった。

 

それがアイスランドだった。

 

 

「冬の星ってどこだと思う?」

 

 

僕はすぐにアイスランドへの航空券とホテルを予約した

 

 

というわけで次回はアイスランドに行った時の事になりますが、まぁ、人生で初めての部類の「自然」を経験しました。ほんと色々と舐めてました。今までみたいな流れで書けるかわかりませんが、よしなに、、

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