医学生になってADHDと診断され、なんとか生きてる話
2020年9月6日
*この記事は質問サイトQuoraにて僕が投稿(解答)したものを改変したものになります。Quoraのものはこちらになります
ADHDや受験とか関係なく、今何かで不安を抱えていたり、乗り越えないといけないものが山積みで押しつぶされそうな人たち、全ての人達の励みになればうれしいです。僕自身おそらくまた、不安で押しつぶされそうになる時期が来ると思うので、そんな未来の自分へのエールも込めて、、、
質問内容:ADHDグレーゾーンだといわれた高校生ですが、医学部に入れるでしょうか?何をしたらいいでしょうか。
以下、解答
(様々な個性を持つ多くの方々の役に立つように、具体的な勉強方法のアドバイスというよりも、精神面での話がメインなのをご了承ください。)
僕は今、日本の地方国立の医学部医学科に通っています。入学してから4,5年経ちます。そして、大学1年生の頃にADHDと診断されました。ちなみに、ストレートに4浪しました。
とりあえず、自分が生きるために大事だと思っている事を二つ。
まず、一つ目は
「自分はダメな存在だと思い込んで自己研鑽をやめないでください」
人生の選択肢はたくさんあり、その中で自分に向いているものが必ずあります。それを見つけるためには、絶えず「もがく」ことだが必要だと思います。
僕はたくさん悩み自分に絶望しました。「4年間も浪人したのは自分が受験勉強という作業に向いてなかったからだ、大学に入れば僕は人一倍できるはず」そんな思いを胸にやっと受かった大学で生活を始めましたが、何もうまく行きませんでした。授業も聞けないし、課題もできない。自分の本当にやりたいことすらもあまりできず、結局ゲームや漫画、SNSにのめりこんでしまう。それも、なんというか「ゲームをやらされている」という感覚なんです。自分がやりたくてやっているというより「ついゲームの電源を入れてしまって、やめたくても、やめたほうがいいと頭でわかっていても、やめられない」みたいな。
その後落ち込んで鬱っぽくなっちゃった頃、大学の保健室のようなところに行き、精神科医にお話を聞いてもらいました。そしてそこで紹介された心療内科に行き、ADHDだと診断されました。診断されてからは自分に絶望したり、「いや原因がわかったのだから、正しく対処すればなんでもできるはずだ」と躍起になってみたり、自分をスティーブジョブズやアインシュタインに重ねてみたり、色々とやってみました。
このように僕は「自分はダメだ」という絶望と「いやなんとかなるはず」というのを繰り返してきました。もちろん「自分はだめだ」と思い込む事も多かったのですが、そのたびに自分なりに試行錯誤して周りの人達のサポートを受けながら前に進んでいたように思えます。結局のところ今は留年もなんとかせずに、楽しく医学部生活を過ごし、勉強しています。発達障害ですが、少しずつ発達した気がします。
二つ目は
「自分の将来に絶望せず、目の前の事に取り組んでください」
自分を振り返ると、たくさんの欠点が目につくと思います。そしてそこから「自分が社会でまともに生きたり働いたり、ましてや難関な大学に受かったり有名企業に就職したりなんか出来ない」と将来に絶望することがあると思います。また、周りからそのような意見を聞くことも多いと思います。しかし、その絶望は僕らの将来にいい影響はあまり与えないと思います。それよりも、目の前の事を乗り越える事が一番大切です。こんなことは冷静に考えればすぐにわかるものですが、不安に押しつぶされてる時はノイズが多くなりがちなので、気づかないうちに負のサイクルにはまり込みがちです。
僕も色々と悩み考え試行錯誤して来ましたが全てが必要だったように思えます。はたからみた他人からは無駄なように思えたでしょうが関係ないです。もちろん周りのアドバイスは大切だし、支えてくれてる人達への感謝を忘れてはいけませんが。
そして、試行錯誤の具体的な内容ですが、まずは自分を知ることだと思います。例えば自分だと、普段スイッチが入らずにのめり込めないときは5分も集中出来ません。そして集中力を伸ばすことはほぼ諦めました。そのかわり、その5分をいかにたくさん繰り返すか、質を高めるかに注力しました。休憩を5分毎にとることになりますが、1,2分ぶらぶら歩いたり、ネットをみたら勉強に戻れるようにタイマーをセットしたり、、、などなど。はたから見たらアホらしかったり勘違いされるでしょうが関係ないのです。僕の人生ですから。周りの基準じゃなくて、まずは自分の目標を達成できたらそれいいのです。周りの基準はそのあとに考えればいい。
また、信じられないかもしれませんが、驚くことに僕は、自分の集中力の無さに大学2年生まで気づかなかったんですね。4浪もしたのに。いや、気づかなかったから4浪もしたんでしょうね。気づいていれば、もっと早く医学部に受かっていたと思います。このように、試行錯誤の最初のステップ「自分を知る」事はとても大切で丁寧にやるべきだと思います。
自分を知った次に、自分の欠点に対して対策を練る必要があります。また、この対策は克服とは少し違い、例えば僕の場合だと短い集中力を伸ばして克服したわけではなく、短いなりにやり方を工夫して(誤魔化しながら)なんとか試験をパスした、といった風にです。ある種の諦めを含むので少し克服とは違うと思います。この自分に合った対策を見つける段階というのは少し時間がかかるかもしれません。しかし、必ずいい方法が見つかるはずです。
良い対策を見出すコツとしては、「理想を追い求めすぎない事」だと思います。例えば僕は5分ごとに1,2分の休憩をして、また5分勉強して、たまに波にのれて1,2時間くらい集中できて、、、、というのを繰り返してますが、決して楽ではありません。一回5分しか集中しないからといっても楽でもないし、なんならそれを何回も繰り返すから苦痛ですらあります。しかし、そういうもんだと思うのです。勉強にしろなんにしろ結果を追い求めるのですから、苦労はつきものです。結局「対策」というのは決して楽なものではなくこれなら「続けられるし、苦しいけどなんとかできる」程度に落ち着くものだと思います。
ただ、確かに苦しさにはどこかで耐えなければならないのですが。それで試験に受かるなどの成功体験を積み重ねると、苦しみの質が少し変わってきます。そうなれば自分の欠点と上手く付き合って生きていく対策が見つかったという事なのだと思います。そしてこの試行錯誤の一連の作業は、例えば高校から大学に進学するなどして、周りの環境が変わり、求められるものが変わったり人間関係や作業環境が変わるたびにたびに必要な作業だと思います。
以上のように数え上げたらキリがありませんが、僕も色々と対策を試みました。ADHDと診断されてからの数年で色々と試して、だいぶうまく生きられるようになっとおもいます。大変でしたが。ADHDと診断された当初は「将来医者になって手術とか長時間できるのか・・・?診察は?カンファレンスは?職場の人間関係は??」と絶望したり、周りの人たちにも似たようなこと言われましたがあまり関係なかったと思います。まずは、進級する事にフォーカスを当てるべきですから。
もちろん、僕が将来きちんと医者をできるのかという問題は残っていますが、将来のことは、たとえ1週間後のことでさえ、その時の未来の自分に任せるべきです。今の自分は今やるべき事に取り組むべきなのです。例えば僕は大学1年生頃にADHDと診断を受け絶望し、2年生以降の解剖実習や医学の授業・試験をうまく乗り越えられるか不安で不安で仕方なくなりました。「1年生ですら課題や授業でたいへん苦労したのに、より忙しい2年生を乗り越えられる訳がない」という論理があったんでしょう。自分が進級できる未来は見えませんでした。しかし、結果留年はせずに無事進級出来ました。なんとか乗り越えられたんですね。もちろん、無茶苦茶に大変でしたが、なんとかなったわけです。
「1年生ですら課題や授業でたいへん苦労したのに、より忙しい2年生を乗り越えられる訳がない」という論理も、一見正しいように見えますが、納得するのにわかりやすいだけで、正しくなかったのです。自分は試験もたくさん落としましたし、無茶苦茶大変ではあったのですが、その度に試行錯誤を繰り返し自分なりに学んで、なんとか再試などで単位を拾えた訳ですから。乗り越えられるわけがないと絶望した時は「解剖実習など2年生の大変さ」に対して不正確な漠然としたイメージしか持ち合わせておらず、また、「自分は発達障害だけど、それなりに成長しそれなりに学ぶ事もできる」という要素を考慮してなかったのでしょう。「乗り越えられるわけがない」という論理は実は前提からとても怪しいものだったのですね。
このように漠然とした将来について自分であれこれ考えて不安になることは意味があまりなく、その時の未来の自分を信じながら今を生き抜く事こそが大事であり、そして今を生き抜く経験は未来の自分を強くするのだと思います。(ちなみに、「自分なりに学ぶ」には「逃げる」というのも含むと思います。「逃げる」対象とは、具体的には無遅刻無欠席をめざす事、いい成績をとること、部活を続けること、などです。僕はどうしても自分には無理だとおもった事は進級に影響しない範囲で逃げまくりました。もし自分が留年してたら、目標を「放校されずに卒業する」に変えていた(逃げていた)と思います。そしてこの逃げは、「医者になる」といった自分の人生のもっと大きな目標へ立ち向かうために必要な事なので悪い事じゃないと思います。)
最後に、医学部受験をめざしていて、不安な気持ちと共にこのサイトに来た人へ
多くの受験生は今焦っている頃だと思います。4年も浪人したからよくわかります笑 ここでまず言っておきたいのが、繰り替えしになりますが、将来についての焦りは必要ない事です。受験に対しての適度な焦りや緊張感は必要だと思いますが、「今年じゃ受からないかもしれない」、「何年経っても受からないかもしれない」みたいな自分のスキルアップに関係のない焦りや不安は持つ必要がありません。これらは自分を良くない方向に追い詰めるだけです。もちろん、「こんな自分は将来どの職についてもやっていけないのではないか、たとえ医学部に受かっても卒業までいけないのではないか、、」といった悩みも不要ですから、そんなものは吹き飛ばして残りの時間でできる事にもがいてください。もし、何かの事情やあなたの心変わりで医学部ではない方向に歩んだとしても、このもがきはあなたを強くしているので、決して無駄にはなりません。応援してます。