太陽系定点観測
プロローグ
僕は東京へ向かっていた。目的は就活で齢28にしての初めての試みだ。高校時代一緒にバカやった仲間たちには大きく出遅れる形で自分の将来を左右する日々に挑もうとしていた。
「大丈夫、まだ試験じゃなくて説明会への参加だけだから」と自分をなだめながら飛行機へと搭乗した。
田舎者の自分が東京で戦うにはそれなりの戦略が要る。自分の人生を左右するイベントのために、未知の世界へ飛び込んでいく。無事に帰ってこれるといいが。
月
3時間後
T「えぇ~~~!!このお肉とっても美味しそうですねっ!!うわぁ香りもすごいっ!」
本「あー、そうね。おいしそうだね。絶対、口の中でとろけるやつだわ。てか、相変わらずのリアクションやなお前。」
K「でしょ、この焼肉屋むっちゃすきなんだよね。本田を連れてこれて良かったわ」
赤坂のおしゃれな焼肉屋にて
T→友人1(ブルックみたいなやつ、ふざけた29歳)
K→友人2(イケメンでおしゃれ、相当頭良い、24歳)
本→僕、本田俊雄(就活中の28歳)
K「この店さ、美味いし店員さんがお肉焼いてくれるのに意外とお手頃なお店なんだよね。絶対本田は気に入ると思ったよ」
本「いや、これはうまいわ。肉に付けるタレまでも指定してきたときは少しビビったけど、言う通りだわ。これが最適解」
店員さん「ありがとうございますー」
T「ほんと、ご飯とも合うし、とろけるようなお肉なのに胃にもたれる感じもしない!!!最高の焼肉屋さんですよぉぉ!!美味しいぃぃ〜私だーいすき」
僕らは久しぶりの再会に、そして美味な肉に対して盛り上がっていた。
本「そういやKは彼女と最近どうなん??結婚するん???」
Kは僕の友人と付き合っていた。今年で6年目になる。そして彼女さんはKよりも12も年上で文字通り一回り上である。
K「うーん、そうだな。俺は奨学金の関係で東京にしばらくいなきゃいけないけどさ、近いうちに結婚するよ。そして将来的には向こうの地元に帰るよ。子育てとかさ、そういうの奥さんの地元の方が色々と苦労が少ないって言うだろ、あいつ(彼女)にとってもさ。だから、卒業したら結婚してゆくゆくは福岡で働けるようになんとかするよ。」
福岡は彼女さんの地元である。つまり彼(K)は、一回り上の女性の人生を背負うべく将来まできちんと見据えているのである。なにより、「ちかいうちに結婚するよ」と言い切った彼の男気に、僕は震えた。
K「T君はどうすんの??もう彼女と何年目??10年目??」
T「はい!もうそんなになりますねぇ、10年かぁ、実感ないなぁ」
Tは何故か僕らに敬語だが、この中で一番年上だ。今年で29歳そして彼には付き合って10年目で同い年の彼女がいる。
本「確かに、Tこそもうそろそろ結婚じゃね??式呼んでよ、余興やるぜ派手なやつ」
T「うーん、結婚ですかぁ。実はお互いの両親への顔合わせは済んでいるんですが、結婚とかの話にはなっていなくて。私の収入も安定してないし、それもあってか彼女に結婚の話を持ち掛けてもあまり乗り気じゃないんですよ。」
本「でも、Tの収入って確かに安定はしてないけど割と稼いでる方だよね??」
Tはミュージシャンだった。確かに彼のバンド自体はそこまでヒットはしてないかもしれないが、雑誌ライターやバンドのサポートやライブの企画の仕事によって人並以上の収入を得ているのを僕たちは知っていた。
K「Tがさ、男らしく結婚の話するの待ってるんじゃねえの??娘さんを僕にください!!って向こうの実家に殴り込みに行く的な」
T「あはは、彼女がそれでなびいてくれる女性だったらよかったんですけどねぇ。彼女、そういうの好きじゃないんですよ。確かに出産とか考えるとそろそろ時間もないですけど、今プロポーズしてもまだ彼女には受け入れてもらえないきがするんです。」
本「えー、なんで??チャレンジはしてみたの??」
T「はい、8年目の記念日にいわゆるプロポーズみたいな事やろうとしたんですが、彼女に避けられちゃいました。理由はわからないけど、実際のところ私自身が避ける彼女に対して強引に行けなくて。指輪は今でも取っておいてあります。勿論、あの時無理やりプロポーズしても良かったのかもしれないが、できなかったんです。たぶん何か自分自身に引け目を感じてるんじゃないかな??って思いました。確かに時は大切ですよ。8年もパートナーでいうるなら籍の話も避けられないでしょう。でも、あの時の僕は8年という長い年月に甘えてたんです。本当は彼女と人生を添い遂げる勇気も自身も覚悟も無かったのに….」
K「それを彼女さんにも察知されたってわけ??」
T「彼女の考えていることは10年目の今でもわからない事だらけです。でも自分にうしろめたさがある状況でプロポーズっていうのが納得できなかったんです!!」
本「そうかぁ、すげぇなぁ二人とも。俺はプロポーズする相手もいねぇもの、そんなに自分の人生に向き合ったことねぇや」
T「そんなタイミングなんて人それぞれですよ!!ほら、また美味しそうな薄い肉が焼かれてますよ!これザブトンって言うんですか????店員さんも焼くの上手いなぁ!プロですね、ほんと!このお肉も美味いんだろうなぁ、あぁいい匂いがっ!!」
K「こいつ、こんなに初めてみたいなリアクション取ってますけどこの店4回目なんすよ。」
本&店員「えぇっ!?!?!?」
T「美味しぃぃ〜また来ますぅ〜!」
火
Y「この前さ、初めてピンサロ、というか風俗に初めて行ったんやけどさ」
本「ほう」
Y「なんかさ逆レイプされたんやけど、その時の話聞く??」
本「いや、ピンサロは逆レイプとかいうオプション無いねん」
Y「いや、ちがくてさ、、、」
トー横広場で映画までの時間つぶし中
Y:浪人時代からの友人。平井堅みたいな顔。27歳
本「とりあえず、話聞かせてや」
Y「いやね、友達に連れられピンサロ?に行ったんだよ。ねぇ、ピンサロって本番はなしよな??」
本「うん、本番があるのは基本的にはソープからやね。ピンサロは “抜き” だけ」
Y「よなぁ。まずさ、俺のについた子が黒田ってやつでさ」
本「え、それ源氏名??」
Y「うん、源氏名が黒田」
本「源氏名、渋いなぁ」
Y「それでさ、黒田がさ、「私どうせもう今日でこの店飛ぶからさぁ」とか言うんよ」
本「あー店辞めるってこと??」
Y「らしい。なんか俺が最後の客だったらしい。それでさ、抜いてもらおうと思ってとりあえずズボン脱ぐやん」
本「うん」
Y「そしたらさ、急にディープキスされてさ、気づいたら入ってた」
本「は??」
Y「いや、だからさ、キスされてる間に生で入ってた」
本「まじか、お前」
Y「それでさ、俺すごい怖くなってさ」
本「性病が??そら、得体の知れない女と生やもんあぁ」
Y「いや、生分の追加料金取られるかもってこわくて」
本「んだよお前」
Y「後、ぱぱになるのが怖くて」
本「それは怖い」
Y「むっちゃ頑張って外に出した。人って恐怖感じるとマジで動けないのな。痴漢された女の子の気持ちよくわかったわ」
本「良かったやないか梅毒野郎。お前はもう梅毒だわ、最近流行ってるし。おい、やめろ、キスしようとしてくるな気持ちわりい!!」
水
O「俺こんどさ、Iの結婚式でIの事をエスコートする事になったわ」
本「はい??」
総武線、上り、小岩らへん
O:浪人時代からの友人。ひげ面、Iと仲よし29歳
I:浪人時代からの友人。イケメン男、天然で天才。27歳
O「いやさ、Iから結婚式の招待っていうか、お色直し後のエスコートしてほしいって言われてさ」
本「お前ら仲良しなの知ってたけど、なんかもう次元違うよね」
O「でも流石にビビったわ。自分の結婚式もまだやのに。」
IとOは浪人時代から無茶苦茶に仲良しだった。というかIがOを兄のようにずっと慕っていた。Iの部活の大会とかにもOを呼んだりしていたくらい。
本「てかさ、俺らの浪人仲間からでIの結婚式に呼ばれてるのOだけじゃね??ほかは全員Iの大学時代の友人とか今の同僚でしょ??」
O「そやねん、俺一人やねん。ぼっちなんよ。」
本「テーブルとかどうなるんかな」
O「親戚と一緒に座るらしいわ」
本「やば笑 でも、めでてぇわぁ。お相手の女性はどんな人なん??」
O「あーむっちゃ強い」
本「あ、吉田沙保里かなんか???」
O「おもんな。いや、我が強い。死ぬほど」
本「わお。どこで出会ったん??」
O「居酒屋の店長の紹介やて。Iもお相手さんも常連やったらしいわ」
本「えー!そんなんあるんや。俺全然そういう紹介とか無いんやけど!!」
O「紹介したくなるタイプやないやん、キミ」
本「うるせぇ、てかOはどうなん彼女おるんか?浪人時代は高校のころの彼女引きずってたやん」
O「あーバイト先の常連さんとつき合ってるわ」
本「あ??」
O「ごめん、俊雄君(僕)、俺は今幸せやわ」
本「あーそうですか、よかったね。帰りの電車の時間調べるわ」
O「俊雄君、顔歪み過ぎてFase ID解除出来てへんやん笑 見てしまったわ笑」
本「うるせぇ!!」
悔しさや切なさは人を狂わせる、例えば眉間のあたりとか
木
Y「これはウチがわるいの??ねぇどう思う??」
本「いや、Yは悪くないよ。でも彼氏さんも悪いわけじゃないと思うよ」
とある歌舞伎町の絆が芽生えそうな寿司屋にて
Y:割と稼いでるキャバ嬢、年上の学校の先生と付き合ってる。元カノ、24歳
Y「忙しいのはわかるけど、変な客のせいでバイトがしんどかった時とか酔っぱらって寂しくなった時とか電話するのはいけない事のなの??23時なら別にいいじゃん、向こうからは掛けてこないくせにウチからかけても電話に出てくれないんじゃ、話出来ないじゃん。そのくせ、なんで怒られなきゃいけないの??」
本「いや、でも12件はかけすぎでしょ、、、彼氏さんも疲れてたみたいだし仕方ないじゃない」
Y「何?ウチが悪いの?」
本「いや、そうじゃなくて、、、」
Y「なんでウチばっかり大変な思いしなきゃいけないの、、、」
本「泣くなよ、こんなとこで、、、」
Y「ウチがどれだけモテるか知らないんだ!!!!!!昨日だって、イケメンに口説かれたのについていくの我慢したのに!!あいつ(彼氏)は電話に出ない!!」
本「それじゃん、キレてる理由。イケメンと遊びたかっただけだろ」
Y「ふんっ!!でも、こんなんじゃ付き合ってる意味わかんない」
本「今は教職の人は忙しい時期なんだし、彼氏さん地元の友達や後輩を優先しがちなのは言ってもどうにもならないからさ、仕方ないじゃん。でも、狭い世界だから浮気はやめときなよ」
Y「うるさい!!!上から目線、死ね!!!」
本「。。。。ところで、良いねそのティファニーのネックレス。お客さんにもらったの??」
Y「うん、、、、、だから今はなるべく彼氏の家に置いてる」
本「なんで??」
Y「一か月彼氏の家に置いてたら、それはもう彼氏の物じゃん。そしたらこのネックレスも彼氏がウチにプレゼントしてくれたことになるし。」
本「なんか錬金術みたいだね」
Y「そういえば、来月ウチの誕生日なんだけど」
本「知らんわ、甘えんな」
day5
day6
day7
ending